デジタル給与払いとは現在本格的な導入が検討されている新しい給与支払いの方法です。
具体的にはQRコード決済などの新しいスマホ決済の口座に直接給与を振り込むことを可能とするシステムとなっています。
このデジタル給与払いには様々なメリットが生まれると考えられている一方で、利用者側の不安や制度上の問題点なども指摘されています。
とはいえ、時代の流れを見てもデジタル給与払いが本格導入される事態は不可避でしょう。
そのため利用者側としても今からデジタル給与払いについて勉強をしておくことは大変に重要となります。
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デジタル給与払いの仕組みを教えてほしい
デジタル給与払いではいわゆる「○○ペイ」といったスマホ決済の口座に、給与をそのまま振り込むことができるようになります。
ただし基本的に振込可能となるスマホ決済口座は銀行口座と紐付いているので、利用者側にとってはチャージの手間が省ける程度で使い勝手が大幅に変わるわけではないと考えられています。
事業者側にしてみても給与の振込指定先が変わるだけなので、導入に当たって何か特別なシステムを準備するといった負担はほとんどないと想定されています。
特徴となるのは振込金額の上限が100万円までと想定されている点ですが、これも月収の給与振込を前提とするのであれば上限に届く人の割合はそれほど多くないと言えます。
問題となるのはボーナス支払いなどになりますが、もし100万円の上限を超えてしまった際には紐付いている銀行口座に余剰金を自動的に退避されられる仕組みなども検討されています。
しかしこうしたお金の流れが問題なく作られるかどうかは銀行と決済業者の連携にかかってくるため、実際にデジタル給与払いが動き出すまでは不透明な要素は多くなっています。

デジタル給与払いを導入する貰い手側のメリット
デジタル給与払いを導入するメリットはまず、利用者にとってはお金の動きをスマホに一元管理できるようになる点が挙げられます。
現在は銀行口座とキャッシュカード、そこにクレジットカードやQR決済用のスマホとアプリが入り乱れている状態になっているため、個人においてもお金の管理が煩雑になってしまっています。
デジタル給与払いが導入されると銀行口座やキャッシュカードでお金を引き出してチャージするといった手間がなくなるため、よりシームレスなキャッシュレス社会が実現可能となるとされています。
また給与を支払う事業者側にとっては、銀行口座への振込手数料を削減できる可能性が高い点が大きなメリットとなっています。
単純に費用削減に繋がるだけでなく毎回の手数料がなくなると給与を月一ではなく日払いにするといった柔軟な対応も取りやすくなります。
特に中小企業にとっては費用を削減しながら新しい労働者を探しやすくもなるため、デジタル給与払いを導入するメリットはより大きいと言えるでしょう。
デジタル給与払いに対する不安な要素はありますか?
デジタル給与払いにはメリットだけでなく様々なデメリットや不安要素も指摘されています。
一番大きな不安の声は「○○ペイといったサービスに給与を預けるのは心配」といったものですが、これに関しては各事業者が信頼を高めていくしか解決策はないでしょう。
ここ数年でスマホ決済の認知度と利用率は飛躍的に高まり、社会に順調に受け入れられてきています。
デジタル給与払いが逆にスマホ決済の社会的な信用を高めることにも繋がれば、こうした不安の声は徐々に減っていくことが期待されます。
一方で大きな問題に直面しそうなのが銀行です。
デジタル給与払いにおいては各決済サービスと銀行口座が連携することが重要になりますが、そのシステム構築の負担は主に銀行側が受け持つことになります。
銀行にとっては口座への給与振り込みという安定した手数料の稼ぎ頭を奪われるのに加えて、スマホ決済事業者のために新しいツールを開発するといった手間をかけなければいけないため正直なところデジタル給与払いに乗り気とはあまり思えない状況になっています。
政府や行政が旗振りをしている以上は従う他はないでしょうが、銀行側の準備が整うまではデジタル給与払いの本格導入は先延ばしになってしまう可能性があります。

デジタル給与払いによる意外な使い道
デジタル給与払いの導入が急がれる背景には、実は外国人労働者の問題も隠れています。
外国人労働者の多くは日本の銀行口座を持っていないため、スマホ決済の口座に給与を振り込むことができるかどうかは働きやすさに直結してきます。
もしデジタル給与払いが本格的に導入されると海外からの出稼ぎ労働者が短期間だけ日本で働くといったスタイルが当たり前になる可能性もあるでしょう。
そうすると日本の労働環境はまた大きく変わってくることにもなります。
またデジタル給与払いはスマホ決済を中心とした「経済圏」をさらに拡大させる効果があるとも期待されています。
いわゆるPayPay経済圏や楽天経済圏のように、特定の事業者のサービスで生活をまとめることによってポイント還元などの恩恵を受けやすくなる状況は今後さらに進化していくと考えられています。
たとえばデジタル給与払いで現金を受け取ることができれば、それを特定サービスで買い物をしてより多くのポイントに変換することもできるようになります。
そのポイントを現金化して引き出すといったことも可能になれば生活スタイルそのものに大きな影響を及ぼすようになるでしょう。

デジタル給与払いから今後の現金化の変化
デジタル給与払いは日本を取り巻くお金の流れを根本から変えるほどの可能性を秘めたシステムと言うことができます。
一見すると利用者にも事業者にもそれほどの負担や変化はないように見えますが、外国人労働者に与えるインパクトや給与形態の柔軟化といった影響まで考えると今後デジタル給与払いはなくてはならないシステムになっていくとも考えられます。
利用者側としてはデジタル給与払いの本格化に備えて、今からメインで利用するスマホ決済を決めておくのも有効となるでしょう。
スマホ決済の経済圏は一強状態になることも予想されるため、なるべく利用者が多く安定しているサービスに乗っておくのが大切となります。
とはいえ未来を予測することは非常に難しいので、たった一つに決め切るよりもいくつか候補を見つけてどこが覇権を握っても問題なくその恩恵を受けられるように準備しておくことをお勧めします。
いずれはデジタル給与払いを使いこなすことが現金化を使いこなすことにも繋がるようになるでしょう。