気になる項目をチェック
知っているようで知らない贈与税とは
今年の3月、国会で税制改正法が可決成立しました。
この改正で少し話題になったのは、贈与税についてでした。
贈与税と聞くと、相続税と混同しそうですが、相続税は、故人から遺産を相続する場合や遺言で遺産を受け継ぐ場合に、遺産の総額が大きい場合に納めなければならない税金です。
そして、個人から現金や土地などの財産をもらった場合に納めなければならない税金が贈与税です。
この二つは、同じようで別もの、つまり「似て非なるもの」になります。
贈与税について何となく知っているつもりですが、実際には分からないことがほとんどです。
特に納める納税額が気になります。
そうなった場合、どれくらいの税率で、納税額がいくらになるのでしょうか。
贈与税の課税方式、暦年課税制度と相続時精算課税制度
贈与税は、一見すると「相続税があるので、いらないのではないだろうか」と考える方もいらっしゃるでしょうが、ちゃんと役割があります。
それは、相続税を逃れるために生前贈与をするのを防ぐため設けられています。
贈与とあるので財産を贈る贈与者が納めるように思われますが、そうではなく、贈与される受贈者に納める義務があり、申告して納めなければなりません。
そして、気になるのが納税金額です。
課税方式には、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つあります。
暦年課税制度とは、毎年、1月1日~12月31日までの1年間で贈与された金額が対象になります。
しかし、その金額が110万円以下であれば基礎控除にあたるので課税されることはありません。
ここで誤解しないでほしいのは、1年間に贈与された人数や回数、金額に関係なく、贈与された総額が110万円以上になると、その超えた分の金額が課税対象になります。
贈与税は、原則として暦年課税制度の方式で納税するようになっています。
しかし、相続時精算課税制度も選択することができます。

基本、贈与税は、暦年課税制度で納める
贈与税は、基本的に暦年課税制度で納税することになっています。
では、暦年課税制度の贈与税の計算の手順を説明します。
1 1年間で贈与された金額を合計する
2 その合計金額から基礎控除を差し引く
3 その差し引きされた金額に税率をかける
この3つの手順で納税金額を導き出します。
そして、暦年課税制度には、一般贈与財産と特例贈与財産と2つの税率があります。
一般贈与財産は、贈与関係が夫婦、兄弟、子が未成年の親などの間柄の場合に使用します。
この場合の税率は、一般税率と呼ばれており、その設定されている課税価格と税率、控除額は以下の通りで、これを用いて金額を計算します。
300万円以下 15% 控除額10万円
400万円以下 20% 控除額25万円
600万円以下 30% 控除額65万円
1000万円以下 40% 控除額125万円
1500万円以下 45% 控除額175万円
3000万円以下 50% 控除額250万円
3000万円超 55% 控除額400万円
例えば、課税価格が400万円だと、400万円×20%-25万円=55万円になり、贈与税は、55万円になります。
では、次に特例贈与財産です。
特例贈与財産の税率は、特例税率と呼ばれています。
特例贈与財産は、両親や祖父母から贈与を受けた場合に適用されます。
しかし、配偶者の両親や祖父母からの贈与には適用されません。
そして、特例贈与財産で設定されている課税価格と税率、控除額は、以下の通りになっています。
200万円以下 10% 控除額0円
400万円以下 15% 控除額10万円
600万円以下 20% 控除額30万円
1000万円以下 30% 控除額90万円
1500万円以下 40% 控除額190万円
3000万円以下 45% 控除額265万円
4500万円以下 50% 控除額415万円
4500万円超 55% 控除額640万円
特例贈与財産の税率は、一般贈与財産よりも低い設定になっています。
これは、2015年からスタートしており、両親や祖父母から受け継ぐ財産は、特例税率が適用されています。
贈与税で相続時精算課税制度を選択した場合はどうか?
相続時精算課税制度は、両親や祖父母から贈与された財産が、2500万円までだと贈与税が非課税になります。
しかし、この制度は、ある一定の条件満たした場合に選択できます。
・贈与者が、その年の1月1日時点で60歳以上になってから贈与をした場合。
・受贈者が、その年の1月1日時点で20歳以上になってから贈与を受けた場合。
・贈与者と受贈者の間柄が親か祖先と孫であること。
この条件を満たせば、選択することができます。
そして、この制度は、2500万円を贈与した場合に、その超えた分だけの金額に対して一律20%分の納税ですみます。
また、この制度は、受贈者が贈与者ごとに選択でき、2500万円の設定金額も合計額ではなく贈与者ごとの金額になっています。
ここまでだと、この制度のメリットが引き立っているように思われます。
しかし、「相続時精算」の通り、贈与者が故人になった場合、それまで贈与された金額は、相続財産と合算して相続税として課税されます。
そのため、一見、節税効果があるように錯覚しますが、最終的に見ると節税になるとは言えません。
また、この制度を選択すると、それ以降は暦年課税制度を選択することができないようになっています。
もし、相続時精算課税制度を利用するなら、そのことを心にとめておいて選択をしてください。
贈与税をもう一度見直し自分にとって最適な現金化を志す
贈与税といっても、大きく分けて暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つの課税方式がありました。
一見、相続時精算課税制度の方が、節税効果があるように思えましたが、最終的には、相続税として、それまでの贈与を精算することになります。
しかし、贈与は、金額の大小に関わらずありがたいものです。
贈与税は、基本的に贈与されたすべての財産に掛かってきます。
その財産とは、現金、不動産、有価証券、普通預金など様々です。
しかし、できれば現金だけの方が、いいと思う方は多いと思います。
贈与者にとっても、現金であれば分与もしやすく、受贈者が贈与税の貯えがなくても、そこから納めることができます。
これが土地や建物などになると、分与しにくくなります。
しかし、現金化すれば、受贈者も、そこから納税することができ、その後の用途にも多様性ができます。
そのため、贈与者は、受贈者へ配慮した贈与を考えておくといいのではないでしょうか。
そして、納めなければならないものは、適切に納めましょう。
